寄稿

Social Distancingの目標減少値 qの重要性

2020.4.3

電気通信大学 特任教員 鈴木和幸 (専門:信頼性工学・品質管理)

佐藤彰洋先生の4月3日のWEB サイト “Social Distancingの目標減少値 q” の分析を拝読し、その大切さを下記の2つの視点から強く感じました。

1.品質管理の視点から、今回のコロナ問題を振り返ると、

品質は検査では作り込めない

—>PCR検査も、その後の治療も勿論大変重要ですが、

  より重要なことは、感染者を生まないという

  品質管理での”品質は工程で作り込む” 即ち

  開発・生産工程(プロセス)に目を向けなければならないということです。

例えば、モノづくりでは、企画によって定められた重要品質特性を実現するために設計段階において重要品質保証項目が明示され、これがさらに生産部門と協力して生産工程上の工程管理項目に展開されます

 —->コロナ問題では、重要品質特性は感染者数、
   重要品質保証項目が佐藤先生のsocial distancingの目標減少値 q に

    あたるかと思います。これをどのように決め、遵守するかです。

2.トラブルの未然防止の視点からは        

生じたことへの批判は誰でもできます。大事なことは取り返しのつかない重大なトラブルをいかに未然防止するかです。未然防止には

  ⅰ) トラブルの予測 と ⅱ) 動機付け

の二つが鍵を握ります。しかし, このとき次の「問い」が生じます。

1)トラブル予測を効果的に為すための科学的方法論を供給できないか?

2)人が実際に未然防止へのアクションを行うための合理的動機付け方法は何か?

その種の動機付けに必要な情報とは何か?

新型コロナウイルスによる感染に関し 

186万人(適切な対策が打たれたとき)~4000万人(対策が不適のとき)の死者数、という報道を耳にしました。これに加え、

ロックダウンによる経済停滞による自殺者の急増

が危惧されます。

予測に関しては ビルゲイツは既に5年前に、TEDにて

『私が子どものころ、恐れていることといえば核戦争でした。しかし、もし一千万人以上の人々が次の数十年で亡くなることがあれば、それはミサイルではなく「微生物」によって引き起こされるでしょう。』 (https://grapee.jp/53259)

と語っています。この予測と警告をリーダーや専門家が理解し納得するための客観的な裏付けを与える科学的方法論を供給できないか?

また、ビルゲイツが予測・警告したように、予測出来たとしても、人は実際に未然防止へのアクションに積極的に取り組むとはいえません。自分は大丈夫だ、今もっと大事なことがある、自分は感染しても軽症だ、と行動には移さないのが人の性です。

4月3日現時点での私たちは

 (A)外出禁止を遵守したときの感染予防効果  vs. (B)ロックダウンによる経済停滞

の2つを天秤に掛け、データ無しに、また、上記の(A), (B)の2つの激論を交わすことなしに、判断・意思決定を行ないがちです。

(A)の外出禁止遵守の本質を検討し、誰でもが遵守・実行しやすくすること、そして、(B)のリスクを軽減することとの両者のバランスが重要となります。例えば、(A)の外出禁止ではなく、手洗い・うがい・顔に触れぬ、三つの密を避けるなどの基本ルールを守った上で、更にこのsocial distance目標減少値q の遵守を実行すればよい、とすれば、最低限の経済活動も保たれる可能性があるのではと思われます。

このように、未然防止へ向けて、効果的な予測(上記1)と これに基づくアクションを行う(実行に移す)ためには 動機付け(上記2)が必要となるかと考えます 

上記1)のトラブル予測に関しては、佐藤先生の分析が、まさに

  1)トラブル予測を効果的に為すための科学的方法論

として大事なものかと思われます。また、

  2)人が実際に未然防止へのアクションを行うための合理的動機付け方法は
何か? その種の動機付けに必要な情報とは何か?

の“動機付けに必要な情報”にもなると思います。
今回、都道府県別に social distancingの目標減少値 q の具体的数値が設定され、これにより、地域毎に社会生活・最低限の経済活動のレベルを変えること、また、qの値に基づき、一人ひとりの活動を定量的に決めることが出来、これらを地域社会全体が一致団結して遵守することが大切なのではと強く思います。