パンデミック終息に向けて私たちに具体的にできること

2020年3月24日版(2020年4月1日改定、2020年4月11日追記)

文責:佐藤彰洋(ahsato@yokohama-cu.ac.jp)

日本では、多くの人の努力によって、比較的感染が抑えられ、死者数もこれまで低い状況を実現して来ることができました。しかし、感染を減らし、終息させるためには、更に感染のスピードを抑え込む必要があります。何故なら、比較的良い状態を保ってはいるものの、現在はゆっくりと感染者が増えつつあり、日本全体に感染が広がりつつある状況がゆっくりと進行しているという状況に変わりはありません。感染者が常に見つかるという状況は、感染連鎖が環境中で継続していることを意味します。そして、終息に向かうとは、この感染連鎖が継続しない状況になり、感染者が長期間にわかり見つからないようになる状況をいいます。すなわち、感染連鎖が継続しないように、感染者が減少に向かうところまで人との接触を控えることを、一定期間社会全員できるかにかかっています。

終息を実現するためには、感染のモデルから考えて一定の人数を超えた場合、どのような方法でも感染拡大を押えられない限界値があり、現在より、どれほど人との接触を減らすことが必要かを明確に定量評価できる予測シミュレーションが可能です。

現在、感染経路が不明の発症事例が確認されていますが、恐らく、無症状または無自覚のまま、日常的な社会生活を送っている感染者が、その日常生活のヒトとの直接接触の過程で感染を知らず知らずに広げていることがその原因であると考えられます。感染経路不明の発症事例が複数発生している場合は、クラスターを形成している可能性もあり、慎重な調査が必要ですが、全ての可能性をしらみつぶしに調べていくことは資源的に無理があります。

現在の様々な都道府県で、感染者の確定数の時系列データから、理論モデルを使って、各モデルパラメータを推計し、減少目標値を算出してみますと、都道府県ごとに若干の差異はありますが、現在行われている人との直接接触を伴う活動頻度を、現在の1.8%~25%に低下させることが計算上必要だと分かっています(「都道府県ごとのシミュレーションによる検討」を参照)。

人間の行動は一般的に1次活動(生命維持に必要な活動)、2次活動(社会的に必要な活動)、3次活動(その他余暇や自己啓発など)に分類されます。平成28年総務省社会生活基本調査によると日本人の平均的活動では、1次活動45%、2次活動28%、3次活動27%となっています。

1次活動はもともと人との直接接触を伴いません。そのため、2次活動と3次活動の55%の活動を人と直接接触を伴わないようにすることで、減少目標値達成を目指すことになります。余暇の時間の3次活動についても自宅で行っていただけるようにすることで27%は削減できます。後は、28%の2次活動をどこまで減少させることがよいかについて検討してみます。

例として、減少目標値qが10%の場合におけるの具体的な活動のレベルを例示すると以下のようなものになります。

  • 出勤・開店・登校が週5日だった人の場合、2週間に1回以下に抑える
  • 現在直接人が会って行っているイベントまたは会議の平均出席人数を1/10にする。または、現在直接人が会って行っているイベントまたは会議の参加回数を1/10にする。残りの9/10は電子メール、電話、チャット、ビデオ会議に置き換える。
  • 生活に必要不可欠な店舗への訪問はこれまで10回に行く期間に1回に留める
  • 公共交通機関に乗車する頻度を1/10以下にする。または、乗車時間を1/10にする。

2週間ですと2次活動と3次活動にこれまで13.2時間×14日=184.8時間を使っていました。これが可能な時間を1/10に減少させることになります。すなわち、2週間で約18.5時間までが利用可能なので、1週間当たり約9.25時間までであれば、外出を伴ってもよいという計算になります。

同居者がいる場合はひとりでも感染者がでると全員が濃厚接触者となり、結果全員が感染してしまうので、世帯当たり1週間当たり約9.25時間と考えられます。3人家族である場合は、3人合わせた時間が約9.25時間となるように設定します。世帯の代表者1名だけを決めて、その1名だけが9.25時間外出できると考えることもできます。

より厳しい、東京都における2020年3月28日現在の減少目標値1.8%の場合は、よりこれが厳しくなります。すなわち、2週間で184.8時間×0.018=3.32時間となります。すなわち、1世帯当たり、1週間当たり約1.67時間だけ外出して人との直接接触を伴うような、生活に必要不可欠な店舗への訪問、公共交通機関の利用、出勤や通学などヒトとの直接接触を伴う2次活動の行為が許されます。もちろん、人と接触する場合の密度についても、これまでの0.018倍の密度にしなければならないので、時間をそろえて集まることは行わないことが前提です。

これを1か月以上、感染拡大が確認されている都道府県ごとの減少目標値qに対して、日本全体で実施できる状況が確保できると、この疫病は終息すると計算されます。そうゆう行動をしないと、たとえゆっくりではあっても感染は拡大傾向が永続的に続いていきます。また、一定レベルを超えたところで感染拡大はコントロール不能になり指数関数的な増加が始まってしまいます。

更に、感染者数の増加傾向が緩やかになり、1日当たりに確認される感染者数が少ない数で推移しますとこの減少目標値qは事後的に増加していきます。その結果、厳しい行動制限が徐々に緩和されていき、これまでの生活に近いレベルに戻ることができるようになります。

辛い時間は短ければ短い方が良いと考える場合、できるだけ早期に集中的に接触を避けることが最終的に被害と、辛い辛抱の時間を最小限に抑えることに繋がるということを全ての人が理解し協力することが今こそ必要なのです。実際に感染が減少に向かう可能性のあるレベルに人々の接触頻度を抑えられたかどうかは、事後的に感染者数の推移で確認することができます。

多くの国民にこの理解が広がり、感染のトレンドが拡大から終息へと向かうことを心より願っております。