空間汚染の効果に関する検討

2020年4月11日版

文責:佐藤彰洋(ahsato@yokohama-cu.ac.jp)

現在の推計モデルで考慮されていない最も大きな効果は、ウイルスによる空間汚染の効果である。これは空間に活性をもって付着しているウイルスにより感染するというヒト-モノ感染というヒト-ヒト感染とは異なる感染経路である。

特に、感染者数が増加するにつれて、感染者が触れた場所にウイルスが付着し、プラスチックや金属表面では、長時間(最大9日間とも見積もられている)ウイルスが物質表面上で活性を有する結果として、二次感染を発生させる危険性が指摘されている。すなわち、感染者数が増加するにつれて、ヒトとヒトの直接的な接触ではないモノとヒトとの接触による感染が生じる確率が高まる。ウイルスが物体表面上で活性を保持できる時間は温度や物質の表面状態に依存していると考えられている

感染者数が少ないときには、空間中に付着して存在するウイルス数はわずかであるため、このウイルスによる空間汚染の効果はほとんど無視できるとして扱ってきた。これにより、これまで推計に利用してきた推計モデルはある一定の近似を与えることができると仮定してきた。直接接触頻度の低下目標値qの算出についても、感染者が少ない場合はかなりの感染抑制効果を有していると考えてきた。

しかし、感染者が増える中で、直接接触頻度の減少目標値の達成だけでなく、物質表面にウイルスが付着している可能性をできるだけ小さくする対応も併せなければ十分な感染拡大抑止効果が得られないと考える。

特に、感染者が発見される場所周辺で、不特定多数の人が共用するものの表面にはウイルスが存在している可能性を常に疑って行動するべきである。

また、感染者が発見された場所周辺でなくても、多くの人が利用する場所、多くの人が触れるモノに対してはその表面にウイルスが蓄積的に付着していると考えて、触れない、近寄らないという対処を行うべきである。

東京都での1日の新規感染者数が200人を超えていくような2020年4月11日以降の状況においては、環境中の感染者は少なく見積もっても2000人は毎日移動していると思わる。そのため、移動した経路上で空間内にウイルスが飛散しているものと考えられるが、どのような経路を感染者が移動したのかに依存して、そのウイルス密度が異なる。おそらく、より人が多く訪れる場所、通過する場所、触れる場所ほど、ウイルスの蓄積量は高まっているとみるとよいと考える。

また、ウイルスが塵埃に付着して飛散している可能性についても同様に常にその可能性を疑いマスクをつけるまたは、塵埃の低減措置をとる必要があると考える。

その結果、感染者確認数がある一定数以上の場合においては、推計モデルで効果として仮定してきた人の直接接触による感染経路ではないものを経由した別の感染経路における感染者の発生が生じるため、これまで推計で用いてきたモデルによる感染者数の予測を行う結果は、常に過小評価となることを意味する。

ウイルスの空間汚染の効果が組み込まれていない現在の推計モデルでは、今後感染リスクを常に過小評価すると考えるため、感染者確認数が1日当たり100名を超える都道府県については、これ以降、推計値の更新作業は、モデルに空間汚染の効果を取り込むことができるようになるまでは一度取りやめとしたい。

参考文献