時系列でみる感染者数の状況

2020年3月27日版(2020年4月6日更新)

文責:佐藤彰洋(ahsato@yokohama-cu.ac.jp)

これまでのCOVID-19の全国での感染者確定数の時系列を見ながら、この感染症の感染拡大の傾向がどのようになっているかについて考察する。

以下の図は、1日当たりのCOVID-19の感染者確定数を示している。感染者は2月の中旬ごろから次第に増加しており、その増加傾向を受け、2020年2月25日に政府は2週間の大規模イベント自粛要請を出した。その後も、増加傾向は衰えず2020年3月10日に再度、10日間の自粛延長要請を出している。

これまでの活動は主として、国内で生じた感染連鎖を特定し、日常生活における接触頻度を低減させることで感染率を低下させることで爆発的感染「オーバーシュート」を抑制することに成功を収めてきた。

これら活動が、感染者数の上昇を抑制する効果があったことは、2020年3月12日からの一旦1日当たりの感染者数に減少傾向が生じたことからも読み取ることができる。しかし、2020年3月14日頃から、1日当たりの感染者確定数は、減少しておらず、むしろ高い値で推移している。

大規模イベントを国内で自粛し、大規模施設も休館することで感染拡大抑止の活動を2月末から3月末まで1カ月かけて行い、一時は感染者数が減少するかのように見えたのに、2020年3月14日以降この減少傾向が確認できない理由はなぜであろうか。

実は、3月上旬に海外旅行をしていた帰国者が旅行中に感染し、帰国後発症する事例が2020年3月15日以降で急増している

主に欧州へ旅行していた旅行者が現在感染拡大で閉鎖される感染リスクが極めて高かった状況で活動し、欧州各国で感染して帰国しているのである。今後は北米からの帰国者についても、感染が確認されていくようになると予想する。これら帰国者の中にいる感染者は、空港の検疫所で発見されたり、帰国後自宅で発症して、検査機会が得られ確定されたりと、確認される状況は様々である。

下図は2020年2月25日以降における各都道府県が公表するの1日当たりの感染者確認数のうち、海外帰国者であった者の日次時系列を示している。これを見ると、欧米での感染拡大が深刻化する時期の2020年2月末頃に海外に旅行して、帰国後、国内でCOVID-19の症状を発症し、その1~2週間後にPCR検査機会を獲得して陽性確定されているものが各都道府県で相当数存在していることがわかる。

しかもその数は2020年3月20日以降今も衰える気配がない。2020年3月30日に確認されたものはその約2週間前に海外でCOVID-19に感染したと考えられる。すなわち、2020年3月15日頃に海外に滞在し、国際線航空機を利用して帰国後、潜伏期間を経て発症して感染者として確認されているのである。

更に、2020年2月の国際線搭乗率が約75%、2020年3月が仮に約50%と見積もると250万人程度の帰国者がこの期間最大存在していたことになる。そのうち仮に、0.1%(人口100万人あたり1000人程度の感染者割合を想定)が感染していたとしても、2500人程度が今後1~3週間で帰国後発症していくこととなる。

この数字はこれまで我が国で2020年1月末から2020年3月21日時点で確認されたクルーズ船を除く感染者数の合計人数1054人の約倍ほどある。おそらく、これ以上の感染者数が今後1~4週間で、産業の様々なセクター、日本国内のあらゆる地域で、同時多発的に確認されていくことになると予想する。

(大阪府、千葉県については2020年3月1日以前の公表様式についてそもそも海外帰国者の項目が存在していないため不明であり0であるかについてはわからなかった。)

2020年2月から2020年3月の間に、米国、フランス、カナダ、フィンランド、イタリア、オランダなど3月上旬から中旬にかけて一斉に感染が広がった国から入国する外国人、および、観光旅行や商務で滞在した日本人帰国者が相当数含まれている。

更に、2020年3月17日にEUが欧州全体の「封鎖」を決定2020年3月20日に米国が全渡航中止勧告要請とそれに続き、2020年3月21日に全世界のビザの発給を停止したことを受け、欧米で短期滞在または旅行滞在していた日本人がこれから1~2週間で一斉に帰国することが予想される。

その多くが感染の疑いがある状況で帰国することとなっている。空港において対象国帰国者全員に対してPCR検査が行われるようになっているが、潜伏期間中は陰性結果が出ることが知らせており、そのまま検疫を通過している可能性は否定できない。そのため、現在は、空港周辺の宿泊施設に14日間自己隔離することが決まったが、移動や滞在費用、滞在中の飲食などは自身で調達する必要があり、課題が確認されている。今後は、自己隔離を行う帰国者へのサポートが一層大切となると考える。

空港検疫は3月15日頃から流行国として認められた欧州各国から順次開始された。そのため、その14日後の2020年3月29日以降で国内における帰国者の発症事例は減少するはずである。下の図は、大阪府と東京都における感染者として確認されたもののうち、海外帰国者の数を示している。空港検疫においてPCR検査が導入された3月15日から2週間後の3月29日以降においても、海外帰国者の発症事例が多発していることが確認できる。空港検疫によるPCR検査は全く機能していないと考えた方がよい。その結果、現在においても海外からの帰国者が継続している状況であるので、国際航空機を本日から全て停止したとしても、今後、3週間程度は海外帰国者の国内での発症は継続するとみたほうがよい。

東京都と大阪府における感染者として確認されたもののうち海外帰国者の数と空港検疫によるPCR検査陽性件数の日次時系列

このような状況証拠から、これから1~2週間の間、海外からの帰国者の発症事例が継続して相当数確認され続けると考える。

2020年3月25日頃から東京都での感染者確認数が40人台の高い状態で推移している。モデル推計から2020年3月10日頃からそれ以前に比べて感染率が約10倍の値を示しており、感染率がこの時期を境に急上昇していると仮定すると、3月25日から確認され始めた1日間の感染者確認数の高い値を説明ができることがわかった。

2020年3月10日以降に感染した感染者の感染率が極めて大きいということは、海外帰国者の国内での発症後に院内感染や市中感染をおこし、すでに2次感染が相当数発生し始めていることの表われである可能性がある。海外からの帰国者の帰国後国内での発症、帰国者の発症に伴う2次感染で、相当数の感染者が生じていると見るべきである。また、欧米で流行しているCOVID-19はこれまで我が国で発生していたものよりもCOVID-19とは異なるようで、スペインとドイツの感染者確認数に対する分析から各段に高い感染率が推計される

これは、政府専門家会議で想定されていた、爆発的感染拡大「オーバーシュート」発生のリスクシナリオでは想定外の、海外からの感染者の一斉流入による爆発的感染拡大のリスクシナリオが実現していると考えるべきである。

更に、その幾人かは、国内の未罹患者へ感染させてしまうかもしれない。これは、今後日本国内の至る所にクラスタを発生させる火種となる危険性さえ懸念される。今後、帰国者の日本国内における同時多発的に発症が確認さえるとともに、その周囲への感染拡大が強く懸念される状況に現在我が国はあると理解するべきと考える(その後、2020年3月30日に京都府において欧州旅行から帰国した学生による集団感染事例が確認された)。

そしてこのことは、上述の1日当たりの感染者確認数が2020年3月25日以降、100に迫る極めて大きな数を示していることからも、このリスクシナリオが現実となっていると考えるべきである。3月25日に感染者として確認された方々はその14日程度前の3月11日前後に感染者と接触し罹患している。これは、COVID-19の潜伏期間(3日~14日)と初期症状(1週間)の後、重症化してからPCR検査の機会が得られ、感染が確認されるためである。

そのため、東京都でのモデル推定で得られる2020年3月10日から感染率の上昇があったと仮定すると感染者確認数の急増が説明できるとすることが全国的に起こっていると考えたほうがよさそうである。

短期的には、更なる感染者数の増加による医療機関への負荷の増大が生ずることが最も懸念される。長期的には、前述のクラスタ形成による感染拡大リスクシナリオである。これは、感染者確認数の急上昇として、東京都においては2020年3月25日から、大阪府においては2020年3月27日から確認され始めた。

これから発生するとみられる長期的なクラスタ形成リスクの低減のためには、国内の未罹患者への二次感染リスクを低減させるため、帰国者の社会との接触頻度を低下させるとともに、未罹患者が感染リスクのある活動を取らないようにする政策的措置を1~4週間全国で組み合わせて対処する必要がある。

国内での同時多発的に発生する帰国者の発症をきっかけとしたクラスタの同時多発的な発生抑止については、すでに、大規模な対応なしでは対策できない段階となっていると考える。

海外での指数的な感染者数の増加が始まるのは医療の処理能力を超え、隔離が困難となるおおよそ感染者数が3000人~5000人を超えるあたりからである。この数字は現在日本国内に存在する安全に感染を抑制する設備と専用のスタッフを有する病床数の合計数が4900であることから算定した値である。

この数字を越えた後は、全人口に向かって指数関数的な感染者の爆発的な増加が発生するため、その後はどれほどの医療設備を整えようとも間に合うことはあり得ない。この3000人~5000人の累積感染者数が我が国で確認されると予想されるのは、4月5日前後である。そのため、感染者確認数3000人~5000人を死守防衛線とし、それ以上感染者が増えないようにするあらゆる資源を投入しての、徹底的な短期決戦による対策が我々には求められている。活動量を低下させての、長期戦は対策のために利用できる資源量(機材、防護服、マスク、消毒液など)に対して、対策が行える時間が限られている。最終的には消耗戦となり資源不足から最終防衛線を守れなかった場合の指数関数的増加モードでの対応策がほとんど考えられない。

経済を蘇らせることは死者を蘇らせることよりはるかに簡単なことである。これまでと同じ経済社会活動を行っていている現状では、この瞬間にも感染者が増え続けてしまっている。今は全ての社会経済活動を停止させてでも、ご自身が感染するということがないように、また、社会的には、この指数関数的な増加が発生しないよう、危険回避的な行動をぜひともご選択頂きたい。

一人でも多くの方が危険回避的に、社会的距離戦略を採用し、ヒトとの直接接触の頻度を今後1~2週間低下させて頂くことにご賛同頂き、実践いただくことが、今後の我が国における感染拡大を抑止する上で極めて重要な活動となると考える。

更に、帰国者の皆様は、症状の有無にかかわらず、政府の要請に正しく従い帰国後14日間は、自宅で待機し出勤や通学を取りやめ、公共交通の使用や人との直接接触を伴う経済社会的活動をできる限り控えることが極めて重要とご認識頂き、行動頂きたい。

COVID-19は感染してから初期症状の風邪や花粉症様の症状がでるまで、3日~14日(平均5.6日)の潜伏期間を有し、更に、症状が出てから1週間を過ぎてから重症化してその感染に気が付き、検査機会が得られるのが現状である。

今後、1~2週間の間で発症した帰国者から周囲の未罹患者が感染した場合には、そのさらに2週間後の4月5日~4月12日頃に重症化してCOVID-19の感染に気が付くこととなるため、その2次感染による更なる感染者の急増がこの時期に発生していないかが、我が国における爆発的感染の拡大の抑止と予防の効果を見極める上で、特に、重要な期間となる。

これから、1~2週間のイベント開催や、屋内での活動、社内での同僚との対面での会議など「多数の人間」が「屋内の密閉空間」で、「会話を行いながら」行動を共にする場合にはこれまでの頻度の1/10程度の規模とし、海外からの帰国者が参加がないように、特に、注意を払って頂きたい。すでに、感染者数の急上昇が確認された東京都と大阪府においては、欧米で猛威を振るっている感染力が強いL亜型の感染拡大が生じていると理解して、人が集まる行為は控えて頂きたい。

また、1日当たりの感染者確認数がどのようになっているかについて、これまでとは異なった形で感染拡大が進行していることを理解し、その状況を確認頂き、細心の注意を払って行動して頂くことが重要である。今我々は、今後の国内における爆発的な感染拡大の抑止のために極めて重要な時期の中にいる。

上記の1日当たりの感染者数データはNHKが毎日まとめて新型コロナウイルス特設サイトから公開している。日々の最新版についてはそちらを御覧頂きたい。

参考文献